能登を舞台にした森見登美彦さんの小説「恋文の技術」(ポプラ文庫)の新版が11月、刊行された。元日の能登半島地震を受け、森見さんは被災地への思いをあとがきにつづった。作品を通して能登に思いをはせてほしい、と地元の石川県でも期待を寄せる。
「恋文の技術」は書簡体小説。能登半島の根っこの町の実験所へクラゲ研究のため派遣された京都の大学院生が、仲間たちに手紙をつづる。2009年刊行で11年に文庫化、15周年を記念して文庫の新版が企画された。
もともと雑誌連載時の舞台は広島だったが、森見さんは07年に能登を旅して七尾(ななお)市周辺に舞台を変え、単行本として出版した。のと鉄道の能登鹿島駅(穴水町)のゆかしい趣や、目の前に広がる日本海に心ひかれた。「どんよりした空、人恋しい風景で、主人公が手紙を書きたくなるだろうなと思った」
あらためて08年、取材のた…