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安橋正人・奈良女子大准教授=京都大学「人と社会の未来研究院」提供

 経済安全保障を理由に、多くの国が産業政策を活発化させている。しかし、経済安保と産業政策は、必ずしも結びつくものではない。経済産業省出身の安橋正人・奈良女子大准教授(産業政策論)は「本来は別次元の議論のものが、一緒くたに考えられている」と指摘する。そこにどんな危うさがあるのか。

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 ――経済安保を掲げた産業政策は、これまでの伝統的な産業政策と、どういった点が違うのでしょうか。

 「産業政策と経済安全保障の関係をさかのぼると、ナポレオン時代に英国との貿易を禁じた『大陸封鎖』にもみられました。1800年代、最先端の綿紡績機を持つ英国からの安価な綿製品が輸入しにくくなった結果、フランス国内で自活する動きが広がり、生産性が向上して国際競争力が上がったと言われています。経済安保が幼稚産業の育成に結びついた形ですが、これはたまたまそのように帰結しただけで、大陸封鎖政策が意図したものではありませんでした」

 「日本では、1980年代に産業政策が盛んに研究されました。かつての研究では『一国の産業間の資源配分、または特定産業内の産業組織に介入することにより、その国の経済厚生に影響を与えようとする政策』と定義しました。ただ、当時は幼稚産業保護や貿易摩擦に関心があり、まだ経済安保という言葉は出てきません」

 ――ここ数年で経済安保と結びついた背景には何があるのでしょうか。

 「現在、米国などで産業政策が台頭している要因は、輸出入を通して技術や知的財産が他国に流出するおそれがあることだけでなく、特定の国でしか生産できないものが『経済的威圧』の手段として使われる懸念です。経済安保の問題が浮上し、産業政策に結びついた形です」

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 ――産業政策と経済安保の目的が合致したということでしょうか。

 「産業政策の目的は、産業競争力をつけることです。例えば中国は、補助金をつぎ込むなどして電気自動車(EV)や太陽光パネルのコストを下げ、競争優位を作りました。先に競争優位を作った方が国際競争上、有利になります。国内雇用や需要拡大にもつながるため産業政策が必要だ、というのが従来の考え方です」

 「一方、特定国に依存しない…

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