寒くなった日、旬のお野菜が手に入った時、ちょっとくたびれている週末も、「だし」たっぷりの料理を食べたい。けれど昆布もカツオ節も、買うところからハードルが高い。そんな気持ちにこたえようと、上方料理研究家の吉田麻子さんが提案するのが「飲みきりだし」。スーパーで買えるそこそこの材料で、まずまずのだしをとろうというすすめです。妥協ではなく必要十分。「だしだけを飲むわけではないから」という答えに納得です。(長沢美津子)

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吉田麻子さんの著書「手軽なのに本格的 ごくごく飲みほす だしの本」(文化出版局)。料理書の編集者やライターと「手軽で、繰り返し作りたくなるレシピ」に知恵をしぼった

 食事作りにかける時間も手間も、増やしたくない生活者に、どうすれば「だし」をとることが身近になるか。

 上方料理研究家・吉田麻子さんが提案するのは「飲みきりだし」だ。「手軽なのに本格的 ごくごく飲みほす だしの本」(文化出版局)にまとめた。

 「日常の和食で、だしだけを飲む料理って実は少ない。なのにだしに高い理想ばかり求めていては、身近な存在になりません」と吉田さん。

 野菜を炊くなら野菜からもだしは出る。お揚げや肉、練り物などうま味を持つ材料を合わせる料理も多い。「だしは縁の下の力持ちなのに、私自身がおおらかに考えず、いい材料できちんととるやり方を伝える一方でした」

 吉田さんは主宰する料理教室での会話で、素朴な和食が食卓から一番遠くなっていること、家ではだしをとっていない人の多さに気づいた。

 だしパックの品質はさまざまで、値の張るものも。めんつゆなどの合わせ調味料やインスタントだしは味の強いものが多い。「シンプルな素材だけでいい。その日使う分だけを、スーパーで買える昆布とパックの削り節で手軽にとる方法にたどりつきました」

 下準備なく昆布と水を火にか…

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