愛知県安城市の人材派遣会社で昨年11月、同社役員の男性(当時41)を刺殺したなどとして、殺人などの罪に問われた小林元被告(36)の裁判員裁判で、名古屋地裁岡崎支部(水野将徳裁判長)は21日、「被害者の命が失われたという結果は誠に重大」として、懲役10年(求刑懲役15年)の判決を言い渡した。一方で、減刑の理由として「約10年間極めて不当な扱いを受け続けていた」などとした。
判決は、被告が一緒に働いていた男性から、実現困難な業務を指示され、実行できないと罰金を科される▽給料が支払われない▽集団で暴行される▽丸刈りにさせられて仲間うちで笑い物にされる――などの行為を受けていたと言及。「尊厳をないがしろにした異様なものだ」と指摘した。
その上で、事件直前には男性から100万円の支払いを突然要求され、「男性が生きている限り状況は変わらない」と決心して犯行に及んだと認定した。
こうした状況を踏まえ、水野裁判長は「殺害は正当化し得ないが、長年置かれた状況には極めて同情できる部分がある。大きく酌量すべき事情だ」とした。
判決によると、被告は昨年11月6日、安城市の人材派遣会社の事務所内で、男性を包丁で刺殺するなどした。(高橋俊成)