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松井周(左)と菅原直樹
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 お金をためれば「楽園」と呼ばれる惑星で、最後の日々を安楽に過ごせる……。そんなSF的な設定の物語で人間の老いと向き合う、松井周作・演出の舞台「終点 まさゆめ」がこの冬、岡山、三重、埼玉で上演される。演出協力として参加する菅原直樹は、これまで老いや介護をテーマに演劇活動に取り組んできた。公募で選ばれた65歳以上の出演者たちとの稽古真っ最中の松井と菅原に、作品について聞いた。

松井周と菅原直樹がタッグ

 企画の始まりは約15年前、松井と高齢者演劇集団「さいたまゴールド・シアター」との出会いにさかのぼる。「ゴールド・シアター」は2006年に、彩の国さいたま芸術劇場の芸術監督だった演出家・蜷川幸雄が、公募で選んだ55歳以上のメンバーと創設した。

 松井は初めて舞台を観た時の印象を、こう振り返る。

 「台本の完成が遅れたか何かで、かなりセリフがおぼつかない状態だったんですが、演じることと生きることがイコールで結ばれるぐらい必死に、セリフを思い出そうとしたり、動こうとしたり。その姿が、『ドキュメンタリー』な感じがあったんです」

始まりは、蜷川幸雄創設の「さいたまゴールド・シアター」

 松井は、この集団のため、法律によって高齢者の安楽死が推奨されている近未来を舞台にした戯曲「聖地」を書き下ろし、10年に蜷川の演出で上演された。

 21年、改訂した戯曲を松井自身の演出で再演する予定だったが、コロナ禍で中止に。その年末、メンバーの高齢化などを理由に「ゴールド・シアター」は解散した。

 再演に向けて練っていた構想をもとに、新たに創作するのが今回の「終点 まさゆめ」だ。惑星へと向かう宇宙船に乗り込む高齢者を演じる6人は、公演を主催する三つの劇場でオーディションを行い、選んだ。いずれも、松井と菅原の活動と縁の深い劇場だ。

記事後半では、稽古場で出演する高齢者と交流する中で、松井さんの老いのイメージが変わったエピソードや、オーディションで選ばれた出演者たちの意気込みも紹介します。

 オーディションに立ち会った…

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