世界初の暗号資産「ビットコイン」を開発した謎の技術者、サトシ・ナカモトの正体をめぐる議論が最近、ふたたび熱を帯びている。
今年に入り、開発当時の「協力者」が、サトシと交わしたメールを相次いで公開。英国ではサトシを名乗る人物の裁判も争われた。米国では10月、大手テレビ局が「サトシを突き止めた」とする特集を放送し、議論を呼んでいる。
ビットコインの発表から16年。相場は今年に入り最高値の更新が続き、11月13日には一時、1コイン=9万ドル(約1400万円)を超えた。
注目が再燃する背景には、時価総額が270兆円に達し、金融システムの中枢を占めるまでに巨大化していることがある。ミステリーはどこへ向かうのか。解明のカギを握るかもしれない2人の技術者が今秋来日した際に、真相を尋ねた。
来日したのは、英国出身のアダム・バック氏と、フィンランド出身のマルティ・マルミ氏の2人。
東京・渋谷で9月に開かれた「ビットコイン・トーキョー2024」に参加した際に、朝日新聞のインタビューに応じた。
ともに、ビットコインの公表前後にサトシ・ナカモトとメールでやりとりを重ね、開発を支援したとして、知られている。2人ともプログラミングや暗号理論に精通し、サトシの人物像に当てはまるとして、架空の天才を演じた「本人」なのではないか、とたびたび報道されてきた。
英国出身のアダム・バック氏は、インターネット上のセキュリティーとプライバシーの保護を主張し、政府の暗号規制に反対する運動「サイファーパンク」に90年代から参加している。
97年には「ハッシュキャッシュ」という技術を発表した。パソコンのCPU(中央演算処理装置)を使う「マイニング」という仕組みの原型とされ、ビットコインでも応用された技術だ。
今年2月、バック氏は、2008年ごろにサトシ・ナカモトとやりとりしたというメールを公表した。サトシ本人だと名乗る人物をめぐる裁判に証拠として提出したのを機に、ネットで公開した。
そこには、アドバイスを求めるサトシに対し、バック氏が参考文献などを案内する様子が記されている。ということは、彼は少なくともサトシ本人ではないということか。
インタビューでは、その点も含めて聞いた。バック氏との主なやりとりは以下の通り。
英国出身アダム・バック氏「私を疑うのは合理的だ」
――あなたがサトシ・ナカモ…