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日本シリーズ第3戦で、五回に勝ち越し本塁打を放つDeNAの桑原
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 26年ぶりの日本一の歓喜に沸いた横浜スタジアムの真ん中で、ガッツマンの笑顔がはじけていた。

 「本当に幸せに思います」

 日本シリーズ新記録となる5試合連続打点に、中堅の守備でも美技を連発する大活躍。シリーズのMVPを獲得した横浜DeNAベイスターズの桑原将志(まさゆき)は、休む間もなく、いま国際大会「プレミア12」で日の丸を背負っている。

 日本代表に選ばれるのは7年ぶり。乗りに乗っている31歳は、今季の開幕当初、チームのスタメンの座すら失っていた。

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 春季キャンプ中に腰の張りがでた。出遅れている間に、ドラフト1位で入団した度会隆輝(22)ら、若手の外野手が続々とアピールに成功していた。

 桑原は、2023年シーズンは自身2度目のゴールデングラブ賞に輝いた名手。だが、生き馬の目を抜くプロの世界で、年をまたぐとベンチに追いやられていた。

 春先の主な役割は終盤の守備固め。1試合に一回限りの打席で、なかなか結果が残せない。パンチ力のある打撃も鳴りを潜め、打率は1割台に低迷していた。

 かつての定位置だった「1番・中堅」での初スタメンを任されたのは、チーム22試合目の4月26日、ナイターの巨人戦だった。

 その試合では、逆に開幕1番をつかみながら調子を落とし、打順を初めて8番に落とした度会が八回に満塁本塁打を放つ華々しい活躍で勝利した。

 桑原も2安打を放った。三回の先制点、そして八回の逆転劇のいずれの起点にもなり、リードオフマンとして渋い働きを見せていた。

 ルーキーがお立ち台で大歓声を浴びてから1時間以上が経過した頃、スタジアムを出てきた桑原が駐車場に姿を現した。

 「遅くまで待たせて、すいませんね」

 報道陣が久々の1番打者としての活躍ぶりを尋ねようとするなか、桑原は切り出した。

 「勝ったからよかったけど…

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