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「学びの多様化学校」の新コースを開設する秋田修英高校の鈴木寿宝校長=2024年11月5日、大仙市、滝沢隆史撮影

 秋田修英高校(秋田県大仙市)は来春から、不登校の生徒が特別なカリキュラムで学べる文部科学省指定の「学びの多様化学校」に応じた県内初の新コースを設ける。文科省によると、東北6県での開校は宮城県内の小中学校3校のみで、高校は東北初となる。

 全日制普通科の新コース「ステップUPコース」。秋田修英が今春、設置認可を申請した。定員は10人程度を予定。学校指定は年明け以降の見込みだが、文科省からの指示で、すでに生徒の募集を始めている。

 授業は対面と、自宅などでの遠隔を併用する。最大の特色は、小中学校の基礎の学び直しと、コミュニケーション能力を伸ばす独自の科目だ。

 1年次には国語、数学、英語の3科目で週1~2時間、それぞれの習熟度に応じた学び直しの授業を設定。3年間を通じて、対人関係を学ぶ「ソーシャルスキルトレーニング」、ボランティアや農作業体験などをする「地域協働」、さまざまな職業理解を深める「進路研究」などの独自科目を週2時間程度設ける。外部講師も登用する。

 卒業に必要な単位数は、他コース(87単位)よりも少ない75単位。始業を1時間ほど遅らせるほか、平日は使用しない通信制課程の教室を使い、他コースの生徒とは玄関を分ける。文化祭などの学校行事への参加は任意で、入学式は別々にするという。秋田大や不登校の子どもたちの学習支援などに取り組む団体とも連携する。

 10月に保護者らに向けた新コースの説明会を開いたところ、30組近い参加があり、「想定を大きく上回る反響だった」(同校)という。12月14日には同校で体験入学会も開く。入試は来年1月25日を予定し、面接のみ実施する。

 不登校などで欠席日数が多い生徒は、中学の調査書の評定などを気にして全日制高校を志願しにくい傾向があるといい、同校の鈴木寿宝校長は「不登校だった生徒は通信制の高校へ進学するケースが多いと聞くが、全日制という進路選択の幅を広げたい。地域とのつながりを学んでもらい、社会的自立の手助けをする。卒業式は他コースの生徒と一緒に迎えたい」と話す。

 文科省によると、学びの多様化学校は今年度までに、全国に35校ある。国は全国に300校の設置を目標に掲げている。(滝沢隆史)

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 秋田県内の国公立小中学校で昨年度に不登校だった児童生徒は1947人(前年度比381人増)で、過去最多を更新した。公立、私立の高校では522人(同191人増)と、こちらも記録の残る2007年度以降で過去最多だった。県教育委員会の担当者は「『無理に登校させる必要はない』という保護者の意識の変化が定着しているのではないか」とみる。

 不登校は、病気や経済的な理由などを除き、年間30日以上登校していない状態を指す。文科省の調査によると、小中学校の内訳は、小学校が644人(同164人増)、中学校が1303人(同217人増)にのぼり、中学生になってほぼ倍増する形だ。

 不登校の児童生徒は増え続け、16年には学校以外の学びの重要性が明記された教育機会確保法が成立した。県教委は「児童生徒に寄り添った個別の対応が大切だ。学校内外の居場所づくりや、授業の充実など魅力ある学校づくりに取り組む」とする。

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