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高知県

 高知県教育委員会が今年実施した2025年度の小学校教員の採用試験で、合格を通知した280人のうち7割が辞退した。県教委は「想定の範囲内」としているが、採用方法が適切か議論を呼んでいる。

 県教委は、教員志願者が減った2016年から、より良い人材を確保したいと関西にも会場を設けて試験をしている。近年は他県より試験の日程を前倒ししている。

 25年度の小学校教員は130人程度の採用を予定し、6月1日に1次試験をした。高知市で154人、大阪府で393人が受験。2次試験を経て9月20日に280人に合格を通知した。その直後から「他県で合格した」といった連絡が相次ぎ、10月末までに7割にあたる204人が辞退したという。

 県教委はその後、13人を追加で合格とし、6日現在の採用予定者は89人。不足分を確保するため、12月にも2回目の試験をする。昨年も200人に合格を通知し、約7割の139人が辞退したという。

 「7割辞退」が続いていることについて、県教委の採用担当は「今年も合格しても出身地で教員になったり、民間企業に就職したりする人が多いと見込み、(実際に採用する人数を大きく超える)280人に合格を通知した」とする。

 そのうえで「より多くの方に受験してもらい、真っ先に『来て欲しい』と伝えることで我々の思いが通じるはず」とし、問題視はしていないという。

 一方、県教職員組合は今年9月、「日程の早期化が質の高い教師の確保につながっているのか検証が必要だ」と申し入れた。県教組関係者は、大学4年生の教育実習は6月に多いとし、「教育実習の時期に配慮し、高知の教員を志願したいと気持ちの固まった人を採用すべきだ」と指摘する。

 高知の教員採用方法や辞退の多さについて、阿部俊子・文部科学相は11月5日の記者会見で「任命権者の工夫の一つ」と理解を示した。(蜷川大介)

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