写真・図版
井上弘貴・神戸大学教授

神戸大学教授 井上弘貴氏

 大統領の座に返り咲きを果たしたトランプ氏。多くの批判を受けながら、なぜ再び勝利したのでしょうか。米国政治思想史を研究する井上弘貴さんは、トランプ人気を支えているのは、起業家のイーロン・マスク氏のような「社会変革を求める保守」だといいます。変容する米国の保守の姿と、2期目のトランプ政権の課題を聞きました。

 ――トランプ氏にとっては4年ぶりの大統領の座です。なぜトランプ支持は根強いのでしょうか。

 「トランプ氏を支持しているのは、いわば文化保守です。彼らは、多様性や平等をめぐる社会的正義を重視する人たちを『ウォーク(woke)』と呼んで敵視し、米国社会から自由を奪い、伝統的な価値観を破壊する存在だと考えています。経済重視に加え、従来の文化を守ることを求めて、トランプ氏に投票した人が多かったのでしょう」

 ――トランプ氏は「従来の文化を守る保守」にはあまり見えません。

 「本人も、保守という意識はあまりないのではないかと思います。『米国を再び偉大に』が最優先で、自分はナショナリストだと言うことはありますが、保守だとは言わない。それでも、リベラルやウォークに反発する保守は、トランプ氏に期待するしかなかったのでしょう」

トランプ氏は異端の保守

 ――トランプ氏は、保守としては異質なのですか。

 「1980年代以降、共和党…

共有