月に1度はゼミ生とともに山梨県境に近い静岡市の井川地区を訪ね、泊まりがけでお年寄りと会話を楽しむ。静岡理工科大学応用言語学研究室教授の谷口ジョイさん(48)。約2時間の道のりを通う目的は、集落に残る井川方言の保存と継承のため。例えば、走るを「ぱしる」と言うなど、ハ行動詞をパ行で発音するような特徴を持ち、「首都圏にも近いのにこんな話し方をするの、と驚かれるような方言なんです」と話す。
母親は日本人、父親は米西海岸の出身で、本人いわく「顔は外国人なので」。覚えてもらいやすく、集落では「あ、ジョイ先生ね」といわれる存在だ。
生まれて間もなく渡米し、6歳で再び日本へ。家の中で父親と交わす会話は英語を継続。家の中では米国さながら、何か希望を口にすると家族の前で「プレゼン」を求められ、英語と日本語で説明していた。そこから二つの言葉がともに母語となっている。
学生時代は数学を専攻し、も…