甘い香りを漂わせ、春に黄色い花をつけるミツマタ。魅せられた住民たちが植樹を続けて10年、そこは県外からも観光客が訪れる人気の場所となった。実はミツマタ、和紙の原料。まちおこしにと、名刺や表彰状、壁紙といった紙製品も作られるようになった。関係者は「花の名所を和紙の産地にもしたい」と夢を描いている。
滋賀県境に接する三重県亀山市安坂山町。新名神高速道路の高架下の谷間、5ヘクタールにわたって約3500本のミツマタが植えられている。管理しているのは地元住民による「みつまたを愛する会」だ。
会ができたきっかけは、20年ほど前にさかのぼる。会長の松井隆幸さん(71)が地区の奥にある険しい山の斜面でジンチョウゲ科の低木、ミツマタの群生地を発見したことだった。
「和紙の原料になるちゅうなんてことは知らんかった。きれいで甘酸っぱいにおいがいっぱいで。ただみんなに見て欲しかった」。終戦後間もなく製紙会社が植えたものの放置されていたことは後で知った。
花の咲く時期に合わせてイベントを開いたところ、大勢の人が集まった。ミツマタで新たな名所をつくろうと目をつけたのが、使い道がなかった高速道路下の市有地。会で借りて2014年から本格的に植樹を始めた。黄色い花をつける3月に合わせて開くウォークラリーには数百人が集まり、県外からも観光バスが来るようにもなった。
地元産のミツマタ使った和紙、表彰状や名刺に
「和紙の原料として利用しませんか」
そんな話が舞い込んだのは4年前。三重県伊勢市の大豊和紙工業から亀山市観光協会を通じてこんな打診があった。
ミツマタは、コウゾやトロロ…