衆院選での与党過半数割れ、国民民主党の躍進などを受け、今後の政権の枠組みが注目されている。中小政党が分立する欧州諸国では、選挙ごとに連立の枠組みが変わることも多い。欧州政治に詳しい網谷龍介・津田塾大教授は、政権が発足する前の政党間で結ばれる「契約」が、政権運営の混乱を防いでいると指摘する。日本政治が参考にできる知恵はあるのだろうか。
政権のあり方は選挙だけでなく「その後」で決まる
――ドイツやフランスなど、欧州では多党連立による政権運営が一般的ですね
二大政党制が成立しやすい英国をのぞき、ほとんどの欧州諸国では単独過半数を取ることのできる政党がなく、複数政党の連立で政権の枠組みが成立しています。
ドイツでは保守派のキリスト教民主同盟・社会同盟と中道左派の社会民主党を中心に、政党がたびたび連立を組み替えています。フランスでは、今年7月の国民議会選で右派、中道、左派のいずれの勢力も過半数を取ることができず、新たな首相の指名が一時行き詰まりました。
各国では、政権のあり方は選挙の結果だけで決まるのではなく、選挙後に行われる交渉に委ねられています。内閣の形成はその最後の段階です。
――日本では二大政党制をめざすべきだとされていた時期もあり、多党連立による政権運営には近年はなじみが薄いです。欧州ではどういった歴史的背景があるのですか
欧州では、19世紀末から20世紀前半に普通選挙が導入された際、多くの国が比例代表制に移行しました。小選挙区制に比べて多数の政党が議席を獲得しやすい比例代表制は、一つの政党が単独過半数を得ることが難しい制度です。そのため、多党の連立で政権を組むことが当初から普通のことでした。
ただ、それは必ずしも有権者…