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JR東海で「ミスターコムトラック」の異名をとる電気部担当部長の山本博さん=2024年9月5日、東京都千代田区、中村建太撮影
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 10月1日に開業から60年を迎えた東海道新幹線。その特徴の一つに、独自の運行管理システム「COMTRAC(コムトラック)」がある。JR東海でおよそ40年、このシステムの改良に取り組み、「ミスターコムトラック」の異名を持つ山本博・電気部担当部長(65)にシステムの仕組みや今後の進化の方向性を聞いた。 

東海道新幹線60年#インタビュー編

東海道新幹線が10月1日、運行開始から60年を迎えました。速度や乗り心地の「進化」の一方、リニア中央新幹線との共存や自然災害への対応といった新たな課題にも直面しています。深く携わって来た関係者の言葉から、東海道新幹線のいまを探ります

 ――いつからコムトラックに携わるようになったのですか。

コムトラック

世界初のコンピューターによる列車運行管理システム。旧国鉄や日立製作所が共同開発し、1972年の岡山延伸に合わせて導入された。当初の機能は、信号や転轍機(てんてつき)の自動切り替えなど、列車の進路制御を中心とした必要最小限のものだった。進化を遂げた現在は、様々なパターンのダイヤ作成や需要分析、座席予約サービスへの運行情報の反映など、新幹線の運用全体をつかさどる

 「父も祖父も旧国鉄職員という家に生まれ、1980年に国鉄に入社しました。入社3年目の時に『新幹線総局東京電気所コムトラック科』という部署に配属され、以来、ほぼ一貫してコムトラックのシステム改修や機能改良に従事してきました。指令所には、保守・メンテナンス要員のための部屋があり、常時3人でそこに詰めて、トラブル対応などに当たっていました」

 ――どのようなシステムなのですか。

 「大きく分けると、情報処理…

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