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いじめ重大事態の件数

 全国の小中学校や高校などで2023年度に認知されたいじめは、過去最多の73万2568件(前年度から7.4%増)だった。心身や財産に重大な被害があったなどとして認定される「重大事態」も1306件(同42.1%増)に上り、初めて1千件を超えた。

 文部科学省が31日に発表した「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」の結果から明らかになった。

 同省は、認知件数が増えた理由について、いじめ防止対策推進法の理解が広がり、いじめの積極的な認知や相談・見守り体制の拡充が進んだため、と分析している。

 調査結果によると、重大事態のうち、生命・心身・財産に重大な被害があった疑いがある事案は648件、不登校を余儀なくされた疑いがある事案は864件(両方の該当事案もあり)。

 一方、重大な被害の把握前にいじめと認知していなかった重大事態も37.5%に上った。同省は「早期発見・早期対応ができなかったり、個々の教員が一人で抱え込んでしまったりするなどの課題が考えられる」としている。

「コロナで人間関係が希薄に」 専門家の指摘

 重大事態が増えた理由について、各地で調査委員会に加わるなどしてきた教育評論家の武田さち子さんは、コロナ禍の影響を挙げて「人間関係がいっそう希薄になった」という可能性を指摘。各地の重大事態報告書から感じる傾向として「人とのつきあい方がわからず、いきなり暴力を振るったり、仲直りの方法が分からなかったり、大人からはささいに見えることでも深く傷ついたりする子どもが増えたと感じる」と話した。また、コロナ禍で困窮した家庭が少なくなく、子どものストレスを受け止め切れていない可能性も指摘した。

 加えて、慢性的な多忙化や指導内容の増加で子どもと向き合う十分な時間がとれない教員が多いことも挙げた。「コロナ禍で失われた人間関係の学びは、学力以上に取り戻すのが困難だ。授業数を減らし、教員の数を増やすなど、現場の余裕を取り戻すための思い切った取り組みを急がないといけない」と話した。(狩野浩平)

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