Re:Ron連載「普通ってなんですか」(第3回)
私は普段ライターが主な仕事だが、昨年4月から編集者の仕事もするようになった。ライター(著者)と編集者、両方をやるようになって見えてきたことがある。
フリーランスの編集者も増えてきたが、一般的には編集者は出版社の正社員であることが多い。対して著者や作者はフリーランスだ。両者の間には、立場の不均衡さ、非対称性がある。
11月に「フリーランス新法」が施行される。これは、フリーランスと企業などの発注事業者の間の取引の適正化と、就業環境の整備をすることによって、フリーランスが安心して働けることを目的としたものだ。いま一度、フリーランスを取り巻く問題について考えたい。
たとえば本の出版ひとつとっても、編集者に企画を持ち込み、もっとこうしたほうがいい、こうしないと企画が通らないと言われ、何度リライトしたとしても、編集者が首を縦に振らなければ、企画会議にすらあがることはない。そして企画会議で通らなければ、どれほど構想を練ったものでもボツになる。
原稿を書いて提出して、編集者が赤字を入れるが、編集者Aは大量に赤字を入れてきても、編集者Bはほぼ何も入れず、これでいいと言われることもある(通常、編集者1人しか原稿には目を通さないが、本の原稿などでまれに複数人の意見をもらうことがある)。
2人に取材しても報酬が5千円など、不当と言える価格の案件もある。また、1万円しか支払われない原稿でも、赤字を大量に入れられ何往復もしたり、1時間超の打ち合わせを複数回要求されたりすることもある。原稿料も1記事あたりで定額だが、1本書くためにどれほど打ち合わせをしようと、その拘束の対価が支払われることはない。打ち合わせの交通費は自腹で、時給も発生しない。
書評や映画評では献本や試写会を利用できることもあるが、中には書籍代や映画の鑑賞代、取材の交通費を著者や作者の自腹で負担する場合もあると聞く。他にも、作品を作るためにさまざまな経費が発生する。もちろん交渉すれば支払われることがあるが、著者や作者の持ち出しということが多い。
さらに、原稿を提出して数日から数週間で手入れされて返ってくるのが普通だが、編集者と連絡が途絶えることや、半年以上、1年近くにわたって原稿が返ってこないこともある。さらに、記事の公開から数カ月経っても原稿料が振り込まれないこともある。
ありえない金額や条件
この業界のよくないところな…