国家主導で産業を育て、太陽光パネルや電気自動車(EV)で世界を席巻した中国。その目はいま「グリーン水素」に向かう。欧米が産業政策を競い合う震源となった中国式の「国家資本主義」は、このまま走り続けられるのか。
水素で動く燃料電池車(FCV)のバスやバイクが街を行き交う。中国南部の広東省仏山市は、水素の利活用を進めようと中国政府が認定したモデル都市のひとつだ。
ここで今月、水素関連の大規模なイベント「中国水素エネルギー産業大会」が開かれた。開幕式で地元政府幹部らに続き登壇したのは、エネルギー大手国有企業「中国石油化工集団(シノペック・グループ)」の中核企業「中国石油化工」副総裁、喩宝才だった。
「習近平(シーチンピン)総書記は水素エネルギー産業の発展を非常に重視している」。同グループが「主導的な役割を果たす」とも宣言した。
政府の政策を推し進める国有企業の中でも、同グループは売上高3兆2453億元(約70兆円、2023年)にのぼる巨大企業である。
燃やして電気や熱を作っても二酸化炭素を出さない水素は、石炭や石油に代わる次世代エネルギーとして注目される。とりわけ、再生可能エネルギーで水を電気分解して作る「グリーン水素」は、製造時も使用時も二酸化炭素を出さない究極のクリーンエネルギーとされ、次世代エネルギーの本命と目される。
そこで中国は世界に抜きんでようとしている。政府が22年3月にまとめた「中長期計画」は、「35年までに交通、貯蔵、工業など水素エネルギー活用の生態系を作る」とした。水素の製造だけでなく、FCVや水素ステーションといった需要側の産業も育て、全体を一気に底上げする計画だ。
次々と立ち上がる大型プロジェクト
国有企業がプロジェクトを次…