現代日本人に至る祖先集団は、弥生時代に朝鮮半島から来た渡来人が縄文人と混血して誕生した――。東京大などの研究グループが15日、弥生人のゲノム解析の結果を専門誌に発表した(https://doi.org/10.1038/s10038-024-01295-w)。日本人の起源については、現代日本人の祖先集団が誕生するのは「古墳時代まで待たなければならなかった」との新説が3年前に登場したが、それを否定する形となる。
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現代日本人の核ゲノムの成分は、縄文人に由来する「縄文系」に加え、大陸に由来する「東アジア系」と「北東アジア系」の三つに大別される。日本人の完成に関わった渡来人のルーツについてはよく分かっていなかった。
従来の「二重構造モデル」を支持
東大の大橋順教授(集団ゲノム学)らは、山口県・土井ケ浜遺跡で見つかった約2300年前の弥生人人骨(大人の女性)の全ゲノム配列を解析し、すでに解読済みの縄文人、古墳人などと比較した。
すると、弥生人は現代日本人と同様、「縄文系+東アジア系+北東アジア系」の三つのゲノム成分を持っていた。遺伝的な特徴は古墳人に最も近く、次いで現代日本人、古代韓国人、現代韓国人の順に近縁だった。
この結果は、すでに弥生時代に、東アジア系と北東アジア系のゲノム成分をあわせ持つ渡来人が縄文人と混血し、現代日本人の祖先となったという従来説の「二重構造モデル」を支持する。
「古墳時代に完成」の新説否定
一方、日本人の起源については「現代日本人の完成は、弥生時代ではなく古墳時代まで待たねばならなかった」とする新説が最近登場した(https://doi.org/10.1126/sciadv.abh2419)。ゲノム解析から、弥生時代の渡来人は北東アジア系、古墳時代の渡来人は東アジア系であるとする「三重構造モデル」が提唱され、話題になった。
ただ今回の結果は、新説を否定する。どちらも弥生人の人骨のゲノムを分析したのに、なぜ結果が異なるのか。
大橋さんは「新説で分析した人骨は、弥生人の代表として扱うのに問題があった」と指摘する。
というのも、弥生人と言っても人骨の特徴から「縄文系弥生人」と「渡来系弥生人」に分けられる。渡来人との混血の具合は、時期や地域によってばらつきがあるためだ。
先行研究が調べた人骨は縄文系弥生人で、さらにゲノムの情報量も少なかったという。「渡来人のルーツを探るには、混血が進んだ渡来系弥生人のゲノム解析が必要だった」と大橋さんは語る。
今回分析したのは、渡来系弥…