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大阪・関西万博への期待を語る障がい者介護施設の経営会社「ノーサイド」社長の中西良介さん=2024年8月16日、大阪府東大阪市の花園ラグビー場、石田耕一郎撮影
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 来年4月に始まる大阪・関西万博では、すべての人が暮らしやすいインクルーシブ(包摂的)な社会づくりもテーマの一つだ。障がい者向けの介護施設を長く経営し、万博のパビリオンの制作に助言する会社社長、中西良介さん(44)は、万博が「障がい者に対する日本社会の無関心を、変えるきっかけになれば」と期待を寄せる。

――日本国際博覧会協会(万博協会)の独自パビリオンに関わることになったきっかけは何ですか?

 2年ほど前に、協会がつくる八つのパビリオンの一つを担う音楽家の中島さち子さんから、知人経由で誘われました。私は大阪府東大阪市を拠点に、20年前から重度心身障がい者の支援をしています。中島さんは、「出身国や障がいの有無に関わりなく、どんな人でも楽しめるインクルーシブなパビリオンをつくりたい」という思いを抱き、仲間を探していました。「万博を利用して自分たちの思い描く社会をつくりましょう」とも話されており、「万博を利用」という素直な表現にひかれました。私も当時、万博を使って、障がい者が暮らしやすい社会づくりを進められないかと考えていたからです。

――担当するパビリオンは「クラゲ館」と呼ばれています。どんな内容になるのですか。

 私たちは毎月1回、館の設計や建設、催事や展示の準備のため、建設や印刷、広告といった会社の社員のほか、音楽家や万博協会のスタッフら計約60人で会議を重ねています。中島さんはその場で、クラゲ館で表現したい「インクルーシブ」の理念を説明するのですが、多くの出席者はその内容を理解できていないと思います。

――なぜでしょう。

 日本社会でまだ実現できていない理想を語っているためです。

 例えば、日本で公共の場に設けられる建築物には、路面に視覚障がい者向けの点字ブロックや、車いす向けスロープなどが設けられます。クラゲ館にも、障がい者の意見をもとに、誰もが使いやすいユニバーサルデザインの設備がとり入れられています。2台の車いすがすれ違える幅を確保したスロープや、出入り口の間口を広くとったトイレ、介護ベッドを備えた救護室、発達障がいの人も見やすいフォントで書かれた展示資料などです。

 いずれも最高水準のできばえですが、これらは突き詰めれば、障がい者が一人でいても困らないようにするのを目的にしています。中島さんや私が唱える「インクルーシブ」とは、こうした設備に頼るのではなく、人と人との結びつきによって、お互いに助け合える状態を指しています。

――障がい者との共生について、日本社会の現状をどう見ますか?

 日本人は障がい者に対し、とても優しいと感じます。ほとんどの日本人は、障がい者に悪口を投げつけるのではなく、笑顔で優しく応対してくれます。日本は世界有数の福祉国家でしょう。

――いいことですね。

 でも、私は、日本人が示す障がい者への優しさは見せかけで、無関心の裏返しではないかと考えています。介護はヘルパーら専門職任せで、多くの国民に、障がい者と日常的に触れる機会はほとんどありません。また、介護施設や障がい者支援学校などが充実するほど、障がい者は社会から分断されています。

 私は、障がい者の介護を優しく手伝ってくださいとぜいたくを言うつもりはありません。それよりも、否定的な感情でもいいから、障がい者に関心を抱いて欲しいのです。今は日本が裕福で、障がい者介護に公的保険を利用でき、ケアする人材を雇えます。でも将来、国が貧しくなった時に現状のような無関心が続いていれば、多くの障がい者は暮らしていけないだろうと懸念しています。

――無関心を改める方法はありますか。

 私は障がい者とのつきあいを…

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