がんなどの病気で入院・療養する高校生に対して、学習を支援する民間事業者や学生の活動が広がっている。高校生への対応と情報の不足が指摘されるなか、ガイドブックやネットで制度やサポートに関する情報を伝える動きもある。

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病気の子どもを支援する大学生たちが集まり、班ごとに他団体の活動の印象的な点などを発表した=2024年10月12日、東京都港区、上野創撮影

 「オンライン院内学級KAYOU(かよう)プロジェクト」(京都市)は、入院中の子どもに月10コマまで無料で授業を提供している。有料のオンライン家庭教師事業を手がける「エイドネット」が、社会貢献として7年前に始めた。

 費用は寄付と講師の善意でまかなう。プロジェクトの名前は「学校をやめることなく通う」「人と人の心が通う」ことを願って付けた。

 講師と生徒がカメラを2台ずつ使い、顔と手元の両方を映す仕組みが好評という。オンラインは子どもが緊張せず、また抵抗力が落ちている状態で感染の危険がない点も喜ばれる。

 KAYOU代表の西岡真由美さん(59)は「私の子どもが難病で登校できなかった経験から、病気の子どもと親御さんに何かサポートしたいと思って始めました。勉強の遅れは復学後に意欲や自信を失う原因になるのに、高校生は院内学級がほとんどなく、勉強の支援が足りないのが特に気になります」と話す。

 がんの治療を受ける高校1年の女子生徒は、通院や入院、その後の体調不良などで学校を休む際、ときどきKAYOUの授業を受ける。時間は基本的に1コマ45分、講師は20代半ばの女性だ。

 がんの発症は中学1年のとき。中3でKAYOUを知り、高校受験では勉強の遅れを取り戻そうと、年末年始も含めて手厚く教えてもらった。ただ、進学した高校は授業の配信をしてくれず、入院・療養で授業に遅れてしまう。病院や家で1人で勉強するのは難しいと感じ、苦手な数学や、単位取得に必要な国語のリポートなどを指導してもらった。

 「オンラインだと体調が悪くても勉強できるし、なにより講師の先生が最高に良くてめちゃくちゃ楽しい。勉強は大変だけど、どうしても行きたくて入った学校も友達もすごく気に入っているから留年しないように頑張りたい」と話す。

国は遠隔教育を後押し 「知られていない」指摘も

 病気の高校生への対応が不足している問題は以前から指摘されてきた。

 文部科学省の一昨年度の調査で、病院内に学級を設置する学校、または教員が訪問教育をする特別支援学校の数は、小学校と特別支援学校小学部が計214校、中学校と同中学部が計164校に対し、高校生向けは高等部48校、うち分校・分教室は15だった。また高校生は「進級・卒業」は69%で、「原級留置」(留年)が11%、「退学」が7%と合計2割近くに上った。

 文科省はオンライン授業などの遠隔教育の制度を弾力化し、進級などに柔軟に対応するよう自治体に促してきた。一方、そうした制度変更などが教育と医療の関係者に十分、知られていないという指摘もある。

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病気の高校生の教育に関するガイドブックを手に、セミナーで語るNPO法人「未来ISSEY」代表の吉田ゆかりさん=2024年9月1日、東京都世田谷区、上野創撮影

 「病気を抱える高校生の思い…

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