解離性同一性障害(DID)という病を知っていますか。かつては「多重人格障害」と呼ばれました。ひとりの人間の中に複数の人格が現れて、突然別人になったような行動をとることがあり、虐待や性暴力被害を経験した女性に目立ちます。エッセイスト・ライターの碧月(あおつき)はるさん(42)は今月、当事者として日々を描いたエッセー集「いつかみんなでごはんを 解離性同一性障害者の日常」(柏書房)を出版します。
- 複数の人格すべてに人権認めて 別人のようになる症状への対し方
昨年夏、JR東京駅近く。碧月さんは取材を終えて一息つこうとカフェに入り、カレーライスとアイスコーヒーを注文した。手持ちの本を開くと、そこに「性虐待」という文字が目に入った。
その瞬間、意識が遠のいた。
しばらくして我に返ると、目の前のカレー皿は空になっていた。その隣には、注文した覚えのないレモンスカッシュがある。
何が起きたのか。
意識が途切れた間、ふだんの碧月さん(主人格)に代わって交代人格が現れたらしい。その人格はカレーを食べた後、アイスコーヒーだけでは満足せずにレモンスカッシュを注文したのだろう。ところが、主人格の碧月さんは炭酸飲料が苦手。仕方なく、むせながら飲み干して店を出た。
性格さまざまな人格たち 根っこに子ども時代の体験
突然に人格が入れ替わるのは…