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ロンドンの高級百貨店「ハロッズ」前を行く人たち。ハロッズの現在の所有者はカタール投資庁だ=ロイター、2022年11月26日

How Harrods, London’s Luxury Emporium, Is Dealing With a Sexual Abuse Scandal

 このデパートのまるで迷路のような七つのフロアを、買い物客はデザイナーズバッグやダイヤモンドをちりばめた時計、エジプトの象形文字が刻まれた円柱の間を縫うようにして巡っている。

 店の外では、アイコン的な店名「ハロッズ」の金色のロゴが印刷された緑の紙袋を握りしめながら、褐色の建物正面を背に、雨も気にせずに自撮り写真を撮っている。

 1849年に開業したこの百貨店「ハロッズ」は、高級品を求める買い物客を長年にわたって引きつけてきた。ところが、1985年から2010年までハロッズのオーナーだった億万長者の実業家、故モハメド・アルファイド氏のレイプ疑惑や性的暴行容疑が相次いで浮上。長い伝統を誇るこの百貨店の評判に影を落とすことになった。

BBCがドキュメンタリー

 BBCは9月に放送したドキュメンタリー番組で、アルファイド氏が複数の女性従業員に性的虐待をしたという衝撃的な告発を詳細に報じた。このため、彼のこうした行動を許したとされるハロッズの企業文化に疑問が投げかけられている。

 告発者たちによると、アルファイド氏はハロッズを若い女性たちを物色する「狩り場」として利用した。倉庫で働いていた女性たちに目をつけ、自身のオフィスに引き抜いていたという。少なくとも5人の女性が彼にレイプされたと証言しており、20人以上の元従業員がハロッズのオフィス内やアルファイド氏の自宅、海外出張先で、セクハラや虐待があったと訴えているのだ。

 女性たちは、アルファイド氏の行動が社内では公然の秘密[open secret]だったと主張。多くの女性従業員が、ハロッズ入社時に不快な婦人科検診や性に関する健康診断を受けさせられた、と言っている。

 なお、アルファイド氏は10年、ハロッズをカタール政府系ファンドに15億ポンド(今の為替レートで約2900億円)で売却している。ハロッズは、被害の申し立てに対応し、和解プロセスを速やかに公表するとともに、サポートや補償請求のために同社に連絡するよう元従業員たちに呼びかけた。また、企業文化の見直しの一環として、「セクハラ被害を訴える従業員に安全で配慮ある支援とサポートを提供する」よう訓練された「セクハラ対策担当者」50人を新たに配置した、と発表した。

 ハロッズがBBCのドキュメンタリー番組の余波に対応している間にも、新たな疑惑が次々と持ち込まれている。

  • 【注目記事を翻訳】連載「NYTから読み解く世界」

元オーナーであるアルファイド氏に関する性的虐待の疑惑が相次いで浮上しているハロッズ。しかし、売り上げには大きく影響しないという見方も出ています。どんな事情があるのか、NYTが報じています。

 弁護士たちによると現在、ア…

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