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12日に販売する「岡上ヌーボー2024」と山田貢さん=2024年10月7日、川崎市麻生区、大島具視撮影

 「純川崎産ワイン」が12日、初めてボトル販売される。川崎の農家が今年収穫した川崎のブドウを使い、川崎で醸造した。これまでは農家が経営するレストランで限定的に提供しているだけだったが、規制緩和が進んで広く販売できるようになった。

 生みの親は、農業生産法人「カルナエスト」と「蔵邸ワイナリー」を経営する川崎市麻生区岡上2丁目の山田貢さん(42)。ぶどうの栽培から加工、販売までを一体で担う「6次産業化」をしようとブドウ栽培を始めたが、酒税法では年間6キロリットル以上醸造しないと免許が下りない。そのためには8~9トンのブドウが必要で、高いハードルだ。

 そこで市に特区の活用を打診し、2020年に「かわさきそだちワイン特区」の認定を受け、少量でも認められるようになった。ただし、自ら経営するレストランでのみ提供するという条件つきだった。ハウスワインのような扱いで知名度が上がらない。

 道が広がったのは今年3月。山田さんの熱意に市制100周年という好機も重なり、ボトル販売を認める別の特区申請が通った。

 そこで、12日に小田急線・新百合ケ丘駅南口で開かれる「しんゆりフェスティバル・マルシェ」で、「岡上ヌーボー2024」のハーフボトル100本を販売することに。メルローとマスカット・べーリーAをブレンドしたロゼで、1本2200円(税込み)だ。

 山田さんが客員研究員を務める縁で、区内に農場がある明治大の学生が栽培したブドウも活用。ラベルは和光大の学生8人が8様にデザインした。田園調布学園大はブドウの搾りかすを用いた天然酵母のパンを販売する。

 新しい特区は「生産量2キロリットル以上を目指す」という条件があるが、今はまだ及ばない。山田さんは「近隣の農地が後継者不足で宅地になるのは残念。ブドウを栽培してもらい、うちが買い取ってワインにすれば、川崎の農業振興になる」と夢を広げる。

 今年の販売は12日だけだが、生産が増えれば酒屋やスーパーでの販売も可能。ブドウ以外にイチゴや梨、柿、ミカンのワインも特区の対象だ。(大島具視)

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