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仮設工房が浸水し、汚れた輪島塗を自宅で拭く七浦孝志さん=2024年10月3日午後0時56分、輪島市小伊勢町広田、堀之内健史撮影
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 国の重要無形文化財「輪島塗」が、豪雨で大打撃を受けた。職人や関連する業者が集中する石川県輪島市の市街地の一部が泥水につかったためだ。元日の地震を経て再開しつつあった伝統工芸が、再び危機にある。

 「まさかこんなことになるとは」。輪島市鳳至町の避難所で寝泊まりしている小西寛さん(76)は、肩を落とす。

 元日の地震前は輪島朝市の漆器店で働き、輪島塗に加飾して販売する仕事をしていた。地震による火災で店を失った。9月、仮設工房に入れることになり、仕事道具を運び入れた。「さあ、明日から仕事を始めるぞ」という日に、豪雨は来た。道具は全部だめになった。

 輪島塗の塗師、七浦孝志さん(76)は輪島市内にある自宅兼工房で、漆器にこびりついた泥を一つひとつお湯で洗い流している。一度洗うだけでは汚れが取れないものも多い。傷がついたものもある。漆器を包む布や木製のケースは泥の悪臭がひどく、もう使えない。

 中学卒業後に職人に住み込みで技術を学び、20代前半で独立。職人一筋でやってきた。

「これからと思っていたところに…」

 自宅兼工房は地震で窓枠がゆがみ、床は傾き、全壊と判定された。今月中に取り壊す予定だ。妻と共に仮設住宅に入り、輪島市が建てた仮設工房で8月から仕事を再開。軌道に乗り始めたところだった。

 その仮設工房が9月21日の…

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