大手住宅メーカーの積水ハウス(大阪市)が2017年、東京都品川区の旅館跡地をめぐり、所有者を装った詐欺集団「地面師」グループから、この土地の購入代金など約55億円をだまし取られた。
大手企業が被害者となったこの巨額詐欺事件を参考に制作されたのが、今夏配信されたネットフリックスのドラマ「地面師たち」だった。
捜査を担ったのは詐欺や汚職を対象にする警視庁捜査2課。その担当記者として取材に携わった朝日新聞の記者が、当事者らへの取材を通じて、改めて地面師グループの実像に迫った。
連載「地面師たち」のリアル
全4回配信します。次回はネットフリックス「地面師たち」に登場するハリソン山中のモデルになったリーダー格の素顔を描きます。
残された20億超の入金記録 「事件で使われた口座だよ」
1600000000、230000000、230000000――。今年9月。都内で会った会社役員の男性(65)が卓上に広げてみせたメガバンク3行の預金通帳の入金記録には、それぞれ記者がこれまでに見たことのない桁数の金額が並んでいた。
「積水ハウスの事件で、使われた口座だよ」。男性はたんたんと、こう説明した。
合計20億6千万円、いずれも振り込みがあったのは17年6月だった。
旅館跡地の売買代金として、積水ハウス側が支出したお金が原資で、男性はマネーロンダリング用とみられるこの口座を、地面師グループのために用意したという。
「地面師」――。持ち主になりすまして売買代金などをだまし取る、詐欺グループを警察の隠語などでこう呼ぶ。
偽造役・準備役・なりすます役・手配役…
グループ内には、明確な役割…