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9月に実施されたイベントで店頭に並ぶ「二十世紀」と千葉の「豊水」=伊勢丹新宿店

記者コラム 「多事奏論」 くらし編集部記者・長沢美津子

 和菓子やケーキに「あまり甘くない」と言えば、いまやほめ言葉なのに、果物だとそうはならない。

 秋の売り場に競うように並ぶリンゴ、イチジク、ブドウ。糖度15、17、20……。品種改良や栽培法が進化し、産地は数値を上書きした新顔を送り出す。手を伸ばせば菓子もジュースもある消費者は、甘みを欲するというより、驚くような味覚の体験を待っているかに見える。

 糖度12度が「これは甘い果物だ」と人が評価する目安だという。だいたい同じになるよう、砂糖を水に溶いてなめてみた。ティーカップに砂糖を大さじ山盛り1杯入れた見当で、十分甘い。

 最近は酸味を敬遠すると聞いたのを頭に置いて、薬局で買ったクエン酸を少量ずつ加えていく。思わず「えっ」と声が出たくらい、さわやかな味に変わった。このさっぱり感……想像で香りを足すと、二十世紀ナシではないか。

 果物産地を歩く企画で鳥取のナシを取材し、湯梨浜町の東郷地区を訪ねた。100年を超える二十世紀の栽培地で、大規模な選果場も持っている。

 シャリシャリと酸味のある青…

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