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練習する八王子高校=2024年9月27日、東京都八王子市、オザワ部長撮影

 東京都江戸川区総合文化センターで9月22日に開催された都吹奏楽コンクール(都大会本選)の表彰式。ステージに設けられたひな壇には、出場した全12校の代表者が2人ずつ並んでいた。

 審査結果の発表が終わり、場内は静まり返った。あとは、全日本吹奏楽コンクールに出場する代表2校の発表を残すのみ。

 八王子高校の代表は、3年の2人だった。部長でコントラバス担当の飛川希が前に立ち、学生指揮者でトロンボーン担当の田代海人が後ろだ。

 「10番。八王子学園八王子高等学校」

 会場にアナウンスが響くと、キャーッという歓声が上がった。同時に、希と海人の目から涙があふれ出した。希は海人のほうを振り返り、固く抱き合った。

 「ありがとう!」

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東京都吹奏楽コンクールの閉会式で抱き合って喜ぶ八王子高の飛川部長と田代さん=2024年9月22日、江戸川区、エーコーフィルム撮影

 希はそう言いながらステージ上で人目もはばからずに泣いた。

     ♪

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 思えば、悔しさに満ちた部活生活だった。

 音楽が大好きな希と海人は、ともに高1から55人のコンクールメンバーに選ばれた。目指すはもちろん、全国大会出場。しかし、昨年、一昨年と都大会本選で代表校には選ばれなかった。

 希は2年前のことをこう振り返る。

 「僕は勝ちにこだわりたかった。高1の本選以降、全国大会の舞台に立つにはどうしたらいいか、何度も田代(海人)と話し合ってきました」

 お互いの音楽性の高さを認め合い、ともに同じ目標に向かう同志として、希と海人は固い友情で結ばれていた。

 「うちに足りないのは、楽器を鳴らして豊かな音を大きく響かせるということでした。ライバル校はそこがすごくて、僕には特に当時代表だった東海大高輪台高校と東海大菅生高校が神のような存在に思えていました」

 弱点を意識して練習を重ねた…

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