東海道新幹線60年#1
東海道新幹線が10月1日、運行開始から60年を迎えました。速度や乗り心地の「進化」の一方、リニア中央新幹線との共存や自然災害への対応といった新たな課題にも直面しています。東海道新幹線のいまを探ります。
8月のお盆期間、JR東京駅の東海道新幹線の中央のりかえ口は人混みでごった返していた。コロナ禍で一時途絶えた、大きなスーツケースを引く訪日客の姿も目立つ。
9時9分、12分、18分、21分、24分――。
改札内の電光掲示板には、3面6線あるホームから、最短3分間隔で次々と発車する「のぞみ」が表示されていた。繁忙期に組まれている特に過密なダイヤで、この日の9時台はのぞみだけで12本に上った。運行密度とそれによる輸送力は、世界でも類をみない水準だ。
1964年の東京五輪に合わせ、世界初の高速鉄道として誕生。「夢の超特急」と呼ばれ、開業前には在来線(東京―大阪)で6時間半かかっていた東京―新大阪間は4時間となった。
その所要時間は、今では最速2時間21分にまで縮まった。速度の「進化」は、航空機との競合に負けないためにも最重要課題に位置づけられてきた。経済の急成長を背景に、社会も新幹線に速さを求めていた。開業当時の「0系」に始まり、新しい車両を生み出しながら改良を重ね、時代に応えて最高時速や加速性能を高めていった。
2代目の「100系」がデビューしたのが85年。車両の寿命は15年程度で、毎年10編成ほどが入れ替わる。100系以降、東海道新幹線では6~8年ごとに新車両が開発されてきた。2020年にのぞみ全列車の最高時速が285キロになり、1時間に最大12本走れるようになった。
直近30年ほどで短縮は9分
しかし今、速度という観点では、その「進化」は頭打ちになってきたかのようにも見える。
現在の最新車両「N700S…