写真・図版
難民認定申請者数、認定者数の推移

 難民認定の申請中でも強制送還できるようにした6月の改正入管難民法施行によって、日本で生まれ育ちながら強制送還の対象となりうる子どもたちが少なくとも263人いる。このうち8割にあたる212人に対し、出入国在留管理庁は、人道的な理由で日本にとどまることができる「在留特別許可」(在特)により在留資格を付与した。

  • 「難民申請中でも強制送還」可能に 改正入管法10日に施行
  • 「子に責任ない」斎藤前法相が示した異例の措置 なおも残る課題

 27日発表した。法改正に伴う特例措置。ただ、帰国した子を除く40人の子については「就学年齢に達していない」(26人)「親に看過できない事情がある」(14人)として許可しなかった。

 難民認定の申請中は従来、強制送還の対象外としてきたが、改正入管法により、3回目以降の申請者らの送還が可能になった。ただ、送還を拒む世帯には日本で生まれ育った子もいるため、日本でしか生活したことのない子どもが送還されることへの懸念が国会審議などで焦点となっていた。

 当時の斎藤健法相は「今回限りの措置」として、改正法の施行までに、日本で生まれ小中高校で教育を受けている子に在特を認める方針を表明。不法入国や懲役1年以上の実刑判決など、親に「看過できない事情」がある場合は認めないとの考え方を示していた。

不安募らせる家族も

 入管庁によると、今年6月10日の改正法の施行までに、強制送還とする理由があると判断した日本生まれの子は263人。27日までに、このうち212人に在特を許可した。これに伴い、親や日本生まれでない兄弟姉妹の計183人にも在特を認めた。

 一方、今回の措置は日本で生まれた子が対象で、日本で一定期間生活をしていても、海外で生まれたり、学校をすでに卒業したりしている子どもは含まれていない。

 そうした子についても、斎藤前法相は昨年8月の会見で、日本の学校に通っていることを「積極的に評価」して判断するとの見解を示している。実際に許可を出しているか否かは明らかにされていない。

 入管庁幹部は「日本の学校に通っているなど特例措置の対象者に準じるような事情は積極的に評価する」と語るが、日本生まれで大学まで卒業したのに在特が認められないなど、「許可されない理由が分からない」と不安を募らせる家族もいる。(久保田一道、浅倉拓也)

共有