インタビュー連載「電ゲン論」
「脱炭素社会」の実現が叫ばれるいま、あらためて「電気」をどうつくるべきなのかが問われています。原発の賛否をはじめ、議論は百出しています。各界の著名人にインタビューし、さまざまな立場から語ってもらいました。
電気はかつて、各地域の電力会社が「地域独占」する形で、各家庭や工場などに供給していました。料金は法律が定める算定方法で決まり、発電所の建設費などの必要費用を織り込める「総括原価方式」でした。政府は外国に比べて高いとされてきた電気料金を抑えるため、2000年に電力小売りの自由化に踏み切ります。まずは大規模工場やデパートなどが電力会社を自由に選べるようになり、16年からは家庭向けでも始まりました。新電力の参入が相次ぎ、多様な料金プランが提供されるようになりました。
「東電しか選べない」ストレスはなくなる
電力小売りの全面自由化が定着し、引っ越しの際などに電力会社を選ぶのが一般的になりました。一方で、電力各社は厳しい競争にさらされています。東京電力ホールディングスの小売会社、東京電力エナジーパートナー(EP)の長崎桃子社長に、自由化の意義や見直すべきことについて聞きました。
――自由化をどのように評価していますか。
「お客様にとって『東電しか選べない』というストレスはなくなったので、自由化の意味はあったと思います。一方で、ロシアのウクライナ侵攻もあって、2022年度は電気料金がものすごく不安定になり、発電量が窮迫する事態もおきました。電力を供給する事業者としては、『量と価格』を安定して届けることは、すごく大事です。自由化が失敗だったとは思いませんが、こうした課題については、次の対策を検討していく必要があります」
――家庭向け料金の一部には、国の認可が必要な「規制料金」が残っています。撤廃すべきだと考えますか。
「国の審議会で、新電力は『撤廃して』とコメントしていましたが、地合いとしては難しいと感じています。それならば、市場価格が不安定になったときに、もう少し迅速に電気料金に反映できるしくみや、短期間で規制料金を変えられるしくみがないと、責任ある小売事業者として役割は果たせません」
――競争環境のなかで、事業者としてはどんなことを意識していますか。
「家庭向けメニューは色々あ…