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医師にがんの病状を相談するインティサル・ガスネさん(左)と親族の女性=2024年6月26日、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸ラマラ
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 人混みでごった返す病院の待合室。スカーフを巻いた女性たちがベンチに座り、診察に呼ばれるのを待っていた。「薬が足りません。どうすればいいのでしょう」

 パレスチナ自治区ヨルダン川西岸の中心都市ラマラ。6月下旬、西岸で最大規模の公立総合病院「パレスチナ医療複合施設」に通院しているインティサル・ガスネさん(68)は、不安そうな表情を浮かべていた。

 昨年8月、血液のがんの一種である多発性骨髄腫が見つかった。当初は抗がん剤治療で順調に回復していたが、今年4月ごろから投与量が3分の2に減った。病院内で薬が不足するようになったためだ。

 その影響で、ガスネさんの病状は進行し、現在はステージ3にある。体重は7キロ落ち、血中のヘモグロビン濃度も減少。体調が悪化することを感じる日々だという。

 アフマド・ビタウィ病院長はこう話す。

 「資金不足で、患者が必要とする薬を用意することができない。イスラエルが我々の資金を取り上げているせいで、医療が成り立たなくなり、患者の健康状態が悪化している」

【連載】もう一つの戦争 西岸からの報告

 ガザでの戦闘が始まって、まもなく1年。イスラエルは西岸で攻勢を強め、占領政策を変化させて住民の生活に大きな影を落としています。国連が「もう一つの戦争」と呼ぶ現場から報告します。

 病院の資金が不足している最大の理由は、西岸を統治するパレスチナ自治政府の財政が危機的な状態にあることだ。背景には、イスラエルが自治政府への資金を「止めている」ことがある。

 イスラエルの占領下にある西…

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