写真・図版
タイミーのアプリ画面(記事とは直接関係ありません)

 今いる会社で勤め上げるか、それとも環境を変えるために転職するか――。誰しも一度は思い悩んだことがあると思います。どちらが幸せになれるのか、結果はやってみた人にしか分かりません。

 40代半ばから4度の転職を重ね、ようやく納得できる「居場所」にたどりついた男性(54)の奮闘記です。

      ◇

 食器をひたすら洗い、腰痛になった。老眼をこすって伝票を確かめ、間違えずに料理を運ぶのが大変だった。湯のみを別の場所にしまうと、20代の外国人店員にひどく怒られた。

 「この年齢になって、メンタルが鍛えられました」。都内の男性はそう漏らす。

 鳥貴族、いきなりステーキ、吉野家……。関西の電機メーカーを皮切りに4社を渡り歩き、独立開業した末に男性がたどりついたのは、お仕事紹介アプリ「タイミー」で見つけた短時間アルバイトだった。今年の春先のことだ。

流転の始まりは「早期退職」

 新卒で入社したのは電機メーカーだった。半導体の技術者を経て広報部へ。当時はテレビやスマホに使われる薄型パネルが高い市場シェアを誇り、殺到するメディアへの対応にやりがいを感じていた。

 ところが海外メーカーの攻勢で市況が軟化すると、会社の業績が暗転。2015年に早期退職の募集がかかった。

 当時45歳。自分の「市場価値」が知りたくて転職サイトの「ビズリーチ」に登録した。転職エージェントを介して10社ほどの面接に臨んだが、結果はすべて不採用だった。

 自信が揺らいだ。メディアに頼られるうちに、どこか「テング」になっていたのかもしれない。

 それでも退職募集には手を挙げたが、意外にも会社に受け付けてもらえなかった。

 「必要とされるのはうれしいが……」。複雑な気持ちでいたところへ再度、エージェントから紹介があり、関西の食品メーカーへの転職が決まった。

 だが、その後は流転が続いた。

 食品メーカーでは、自ら進言…

共有