レッツ・スタディー!演劇編④ 佐月愛果さん

写真・図版
佐月愛果さん ©NMB48

 舞台歴16年というNMB48・佐月愛果さん(22)が舞台芸術の魅力を紹介するコラム「NMB48のレッツ・スタディー!」演劇編第4回。第3回に続き、佐月さんの原点でもあり、憧れでもあるという「タカラヅカ」の、ある舞台について佐月さんがナビゲートします。

     ◇

「言葉を口にしたときに…」 はっとさせられたセリフ

写真・図版
佐月愛果さん=大阪市中央区、滝沢美穂子撮影

 第3回に続き、宝塚歌劇団花組公演「Liefie(リーフィー) ―愛(いと)しい人―」(7~8月に東京、大阪で上演)を観劇した感想を書かせていただきます。

 舞台は、オランダの小さな街。新聞記者として働く主人公ダーン(聖乃あすかさん)、その幼なじみであるミラ(七彩はづきさん)、ミラと同じく幼いころに両親を亡くした青年レオ(侑輝大弥さん)たちを中心に物語は進みます。

 ダーンは、誰もが笑顔になれるような、世界を明るくできるような「言葉」を探しています。

 「言葉」をテーマとした作品とあって、劇中のセリフも練られており、何度もはっとさせられるシーンがありました。

 セリフの中でとても共感できたのが、「言葉を口にしたときに自分も痛ければ、人を傷つけてしまうことがわかれば、痛い思いをする人が少しでも減るのかな」。本当にその通りだと。

 アイドルをしていると、どうしても色々な言葉を耳にしますし、目にもします。

 気にしないようにはしていても、人間ですからやはり傷つくときは傷つくものです。

 相手を殴って傷つけてしまったときに自分の手も痛いように、相手が傷つく言葉を言うと自分も痛ければ……。痛い思いをする人が少しでも減るのでしょうか。

 私自身も、人を傷つけるような言葉を無意識に言っているかもしれない。そう思うと、言葉は時に凶器になるものだと感じ、怖くなりました。

AKIRA先生から聞いた「一度しか言わない」言葉とは

写真・図版
佐月愛果さん ©NMB48

 一方で、前向きな言葉というのは人を励まし、ポジティブな気持ちを与え続けることができると思います。

 例えば私は、ダンスの指導をしてくださるAKIRA先生の言葉を今も大事にしています。

 私は「かっこいい」系統の曲は得意だと思っているのですが、「かわいい」系統の曲に苦手意識がありました。舞台で経験を積んできた私にとって、歌詞の主人公の心情に入り込みやすい曲、一貫した物語性のある曲は表現しやすいのです。そうした曲は、「かっこいい」系統の曲に多いと思っていました。特に、孤独の闇に閉じ込められた魂と、その救済をうたった「最後のカタルシス」という曲はとてもドラマチックで、聴くのも歌うのも好きです。

 とはいえアイドルとして、「かわいい」をどう表現するかという課題を避けてはいられない。過去の諸先輩がどんな表現をみせていたか映像を何度も見返したり、先輩に助言を求めたり、四苦八苦しながら研究しました。

 そのうちに、自分は表情に頼って「かわいい」を表現しようとしていたのではないかと思い当たりました。「かわいい」は「かっこいい」とはまた別の発想で表現することが必要であり、角度のつけ方、衣装の使い方、指先の動きなど、「全体としての見え方」を意識しなければならないということです。

 「なんば笑顔開花宣言」公演に、「かわいい」系統曲の代表ともいえる「ハート型ウイルス」というユニット曲があり、それを私が担当する機会がありました。その曲をやりきったあと、普段は簡単に私たちを褒めることはしないAKIRA先生から「一度しか言わないけれど、この曲での愛果の表現はとてもかわいい」と言われました。

 めったにないことだったので驚きました。「私にもまだまだ引き出しがあるんだ」という自信にもつながりました。NMB48を卒業したあとも、この言葉は大切に次の場所へ持っていきたいと思います。

「私がセンターに立ったときも…」 わき上がったファンへの感謝

写真・図版
佐月愛果さん=滝沢美穂子撮影

 舞台の紹介に戻ります。

 フィナーレは、娘役ナンバーから始まったのですが、娘役さんでは珍しいパンツスタイルのかっこいいナンバーでした。

 下級生から抜擢(ばってき)された真澄ゆかりさんが、センターで素敵な歌声を響かせていました。

 お芝居では少年役を演じていた初音夢さんも美しい娘役さんとして踊っていて、先ほどまでとのギャップに目を奪われました。また、このナンバーの中では最上級生の三空凛花さんが舞台をグッと引き締めていたのも印象的でした。

 その後は男役群舞。やはり男役さんそろっての群舞は圧巻です。

 中でも私が応援しているレオ役の侑輝大弥さん。今回2番手格として、センターで踊られる場面もあり、うれしくて、気が付けば涙が出ていました。

 と同時に、私が初めて劇場公演でセンターに立たせて頂いたときも、ファンの皆さまはこのような気持ちになって下さっていたのだろうか……と思うところがあり、ファンの方お一人おひとりへの感謝の気持ちが込み上げてました。

 前回の「演劇編」で、レオが物語全体の中でのスパイス的存在になっていると書きましたが、スパイスといえば、組長の美風舞良さん演じられる新聞社の社長も独特の存在感を発揮していました。巧みなコメディーお芝居で、客席の笑いをかっさらっていく姿は、さすがの組長さんでした。

 とても心が温かくなるストーリーで、「私にとっての愛(いと)しい人」を思い浮かべながら観(み)れば、きっと涙があふれてくるような気持ちになれると思います。

 「宝塚、観てみたいけどなかなか行きづらい……」というお声をよく耳にしますが、この作品はブルーレイ化されて発売されるそうです。劇場で観劇するのはまだちょっとハードルが高い、という方もぜひ、「あなたにとっての愛しい人」を思い浮かべつつご覧になってはいかがでしょうか。

【佐月愛果さん】写真ギャラリー

 さつき・あいか 2002年…

共有