【動画】北海道の厳しい海辺の情景や生活を歌い上げる「江差追分」を親子3代で歌い継ぐ家族=野田一郎撮影

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内村義徳さん(右)と娘の月菜さん=2024年9月8日、札幌市東区
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 民謡の中でも繊細な節回しが難しいとされる「江差追分(えさしおいわけ)」。本場の北海道江差町で20日から始まる全国大会は60回目だ。多様な音楽を聴ける今の時代にあって歌い手は減少の一途をたどるが、親子3代で歌い継ぐ一家が伝統をつなぐ。だが、江差追分に再び光が当たるための課題は大きい。

 「かもめの鳴く音(ね)にふと目をさまし あれが蝦夷地(えぞち)の山かいな」

 江差追分はわずか26~27字で厳しい北の海辺の情景や生活を表現する。抑揚をつけたり音程を上下させたりしながら哀愁を込め、3分ほどで歌い上げる。今回の全国大会には一般、熟年、少年の部に6~90歳の計348人が出場する。3日間にわたり朝から夕まで入れ代わり立ち代わり舞台に上がり、この1曲を延々と歌い続ける。会場の町文化会館周辺では屋外スピーカーから大会の模様が流れ、人口約6700人の町は江差追分一色に染まる。

 大会にかける一家が道内にいる。札幌市東区の介護福祉士、内村義徳(よしのり)さん(42)と娘の月菜(つきな)さん(13)はライバルだ。昨年、義徳さんは準優勝。小学6年だった月菜さんは少年の部で優勝し、今年から一般の部に挑む。尺八の奏者でもある義徳さんが月菜さんの伴奏を務めるのは今回も同じだ。

 2人の師匠は、義徳さんの父親で250キロ離れた函館市で民謡を指導する徳蔵さん(75)。2人はそれぞれの歌をスマートフォンで録音して徳蔵さんに送り、指導を受けてきた。「表現の細かい所まで教えてくれる。いなきゃいけない存在」と月菜さん。一方の徳蔵さんは「息子や孫と違って、私は若いころに何度か全国大会の予選に挑戦しましたが、決選会に出られたことはありません」と笑う。

 徳蔵さんは民謡好きの母に女…

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