クミコさん(59)には朝の日課がある。自宅から車で15分ほどかけて大阪府内の実家に行く。母親(75)の薬を用意し、血圧や血糖値を測り、インスリン注射のサポートをしている。
母親はアルツハイマー型認知症だ。インスリン注射の手順をクミコさんが伝え、おなかにうつのは母自身の手で。自分でできることはできるだけ自分でしてほしい。クミコさんはそう思う。
「お母さん、今日は何日? 何曜日だっけ?」。日付と曜日が画面に映るテレビ番組をつけておいて、母に聞く。母は画面を見て答える。
「そうだよ。じゃあ、行ってくるね」。出勤だ。
クミコさんは看護師。社会医療法人の理事や総看護部長を務め、看護師たちを教育する立場でもある。病院での勤務のほか、学校で講義をもち、各地に講演に行くこともたびたび。
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そのなかで、母の薬管理やインスリン注射、月1回の通院や週末の買い出しを担っている。
母と暮らしている父(83)は、自営業を営み、日々忙しく、早朝に出かけていく。母はクミコさんのことはわかり、自分で食べたり動いたりできる。ただ、外に出ず、テレビをながめている毎日だ。
血圧や血糖値を測った数字…