釣りの対象として人気のブラックバスは、小魚や昆虫を食べ、生態系を荒らす侵略的外来種だ。ほんのわずかな放流から各地に広がり、今や経済活動にも組み込まれ、対策は一筋縄ではいきそうにない。

 東シナ海に面する鹿児島県薩摩半島の日置市吹上町にある中原池(通称・薩摩湖)。ミミズを房掛けにした仕掛けをヨシ原の際に投げ込んでみた。直後、破裂音とともに水面が割れ、さおが「つ」の字に曲がるほど引き込まれた。体長約30センチのブラックバス(オオクチバス)を釣り上げた。

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オオクチバス=滋賀県立琵琶湖博物館

約60年前の出来事、影響は大きく

 オオクチバスやコクチバスなどをまとめて指すブラックバスは、北米原産の淡水魚。大正時代に神奈川県箱根町の芦ノ湖に持ち込まれた。

 薩摩湖にいるのは、56年前の1968年7月に鹿児島大学水産学部が放した、たった18匹の子孫とみられる。放流の目的は釣りなどの観光資源の創出だった。その後、薩摩湖から九州各地の湖沼や河川にも放流された。

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オオクチバス(ブラックバス)とは

 薩摩湖がある日置市の隣、薩摩川内市の火山湖「藺牟田池(いむたいけ)」もその一つだ。2005年にラムサール条約登録湿地となった。環境省のレッドリストで絶滅危惧ⅠA類のベッコウトンボなどの希少な生き物の生息地となっている。

 だが、環境省によると、約4…

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