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国内最大規模の展示施設で暮らすアジアゾウ=2024年6月19日、愛知県豊橋市の豊橋総合動植物公園、松永佳伸撮影
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 全国の動物園で、ゾウのすまいの新築やリフォームが相次いでいる。砂浴びや水浴びをしながら仲間と群れで暮らせる、広々とした飼育施設を増やす目的は、園内での繁殖を進めるため。ゾウのストレスを減らし、野生の暮らしに近づける取り組みは、少しずつ実を結び始めている。

 乾いた草原を再現した広々とした空間を、アジアゾウの群れが行く。ゆったりエサを探し、時折、仲間とじゃれ合う。

 豊橋総合動植物公園(愛知県豊橋市)は2021年4月、約500平方メートルだったアジアゾウの展示施設を、国内最大級の約5900平方メートルに拡張した。

 翌月には、共同繁殖計画の一環でインドの動物園から3頭のアジアゾウが来園。それまでの3頭と合わせて6頭となった。日本動物園水族館協会(JAZA)に加盟する国内の公立動物園では最多だ。

 このうちメスの4頭が、約3760平方メートルの施設で群れで暮らす。アジアゾウ担当の獣医師、木谷良平さんは「広い展示場でストレスなく楽しそうに過ごしているように見える。群れで暮らすと、若いゾウはさまざまな経験ができ、ゾウ本来の社会性を身につけられる」と目を細める。

 JAZAは21年、アジアゾウの「適正施設ガイドライン」を作成した。施設の新設や増改築の際は、多頭飼育が可能な面積を確保し、適切な群れの管理と健康管理ができる設計にするよう、加盟園に求めている。1頭あたりの展示施設面積の目安は最低500平方メートルだ。

 同じ年、多摩動物公園(東京都日野市)に完成した新ゾウ舎「アジアゾウのすむ谷」は約4200平方メートル。13年に東山動植物園(名古屋市、約3300平方メートル)、15年に京都市動物園(約5500平方メートル)、18年に札幌市円山動物園(約5200平方メートル)と、ガイドラインを先取りする形での拡張や新築が行われた。

やわらかい砂敷き詰めて

 各園の広々とした施設には野…

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