子どもに重い遺伝性疾患を受け継がせないように、受精卵の段階で遺伝情報を調べる「着床前検査(PGT―M)」は、欧米ではより広く実施され、国内でもさらなる拡大を求める声がある。一方で、無制限な拡大への懸念も強い。
日本産科婦人科学会(日産婦)が28日に公表した報告書によると、2023年に計72件の検査の申請が審査され、うち58件が承認された。不承認は3件で、取り下げが2件、残り9件は審査継続中だった。
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さらなる対象の拡大について、加藤聖子理事長は会見で「今回の発表で、国民からいろいろな意見が出ることは想定している。意見をふまえて議論していきたい」と語った。
着床前検査は、体外受精させて数日培養した胚(はい)(受精卵)から数個の細胞を採り、子宮に移植する前に遺伝情報を調べる。
国内では、日産婦が1998年に会員に対してルールを定めた見解を示し、申請にもとづいて1例ずつ審査する仕組みが導入された。
きっかけは、鹿児島大が計画した着床前検査の臨床研究だ。特定の疾患があるかどうかを理由に、生まれるべき人間とそうでない人間を分ける「命の選別」だと、障害者団体が強い抗議の声をあげた。
95年、鹿児島大の倫理委員会が日産婦に考え方を問い合わせ、その後、日産婦がルールづくりを担うことになった。
日産婦は、検査の対象を「重篤な遺伝性疾患」に限定し、「重篤」の判断基準は、成人になる前に、日常生活が著しく損なわれたり、命がおびやかされたりする状態とした。また、日常生活を著しく損なう状態は「人工呼吸器を必要とするなど、生命維持が極めて困難な状態」と解釈した。
このため、成人になる前に発症し、命に直結する病気が検査の対象とされてきた。
この「重篤」の捉え方に変化が起きている。
「例外」認める解釈の余地
きっかけは、18年に、目の…