【動画】山口県上関町の原発と中間貯蔵施設の建設予定を訪ねる=奥村智司撮影
全国で唯一、原発とともに使用済み核燃料の中間貯蔵施設の計画が浮上している山口県上関町。瀬戸内海に突き出た半島の端から渡った過疎の島の、そのまた端。「予定地」はそんな所だ。
町は室津半島の南端といくつかの島からなる。本土と「長島」をつなぐ上関大橋の周辺が中心部だ。橋のかかる海峡沿いに降り立つと潮の香りが漂い、船の汽笛が鳴り響いた。
【連載】核燃料のゆくえ
原発で使い終わった核燃料をどうするのか。中国電力と関西電力による中間貯蔵施設の建設計画の動きや、使用済み核燃料の現状を連載で報告します。
「鳩子てんぷら」や「鳩子の湯」の看板が目に付く。「鳩子」は、町が舞台のNHK連続テレビ小説「鳩子の海」が由来。放送は半世紀前の1974年度だが、今も観光の売りになっている。鳩子の湯は町が建設した温泉施設だ。湯上がりの高齢の町民は「ここくらいしか来るところがない」と話した。
町の人口は約2千人。減少がとまらず、6割に迫る高齢化率は全国の自治体で9番目に高い(2020年国勢調査)。「中心部」にもコンビニやスーパーはない。鳩子の湯の他に人が集まっているのは、地元の海産物や果物などが並ぶ道の駅だ。どちらの施設も原発の特別交付金で造られたものだ。
町に原発計画が浮上したのは1982年。当初から町は賛否に割れてきた。反対運動を続けてきた80代の女性は、勤務先や親戚から「反対をやめろ」と「いろいろな圧力がかかった」と言う。賛成派の住民に自宅の人の出入りを調べられたこともあった。
徐々に反対派が細っていく中…