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海辺から打ち上げられた花火が「浜野浦の棚田」を照らした=2024年5月6日午後7時34分、佐賀県玄海町浜野浦、岡田将平撮影
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 今年、「核のごみ」(高レベル放射性廃棄物)の最終処分場選定に向けた文献調査を受け入れた佐賀県玄海町。その歴史は原子力発電所と切り離せない。一方で、「原発の町」以外の側面もある。町の魅力や課題を知りたくて地域を巡った。

棚田を照らす花火、景観守る取り組みも

 暗闇に色とりどりの花火が浮き上がった。その光を田んぼの水面が鏡のように映し、輝きを増す。ゴールデンウィーク最終日の5月6日、玄海町の「浜野浦の棚田」で、町内外の人が、数分間の花火ショーを楽しんでいた。

 海におりるように田んぼが283枚並ぶ、町を代表する名所。4~5月は、水を張った田んぼを夕日が照らす光景が美しく、写真愛好家や観光客が訪れる。

 だが、生産性の低い棚田は維持が難しく、担い手の高齢化で、水が張っていない田も見える。

 そんな中、景観の維持に農家以外の協力も得ようと、2年前から「守る米づくり」という取り組みが行われている。参加費2万円を払うと、田植えや稲刈りなど米づくりを体験でき、収穫した米も受け取れるという企画だ。花火のあった日の日中には田植えがあり、30人ほどが汗を流した。

 主催する玄海町みんなの地域商社の青木一里さん(52)は「守る人がいるからこその棚田の美しさ」と語る。今月24日には稲刈りが行われる予定だ。

 記者は文献調査の取材を機に、佐賀市から玄海町にたびたび足を運ぶようになった。さまざまな表情を見せる棚田、海岸線が入りくむ海の景色、「佐賀牛」の牧場。町北部に半世紀近く立地する九州電力玄海原発だけではない町の魅力や特徴があることを知った。

「出稼ぎ欠かせぬ町」は原発で変わった

 ただ、「原発の町」としての…

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