画家の大河原愛さん(45)は子どもの頃、闇の中で途方にくれるような感覚と共に生きていた。
夜間警備員の父と、ホームヘルパーの母と、6歳上の兄と、都営住宅で暮らしていた。家の中は父がため込んだ10年以上前の新聞や本が山積みで、足の踏み場もない。両親はいさかいが絶えなかった。
こだわりが強く、人への共感性に欠ける父には何度もとまどい、心を傷つけられた。
「父はいつも優等生の兄ばかりをほめて、たとえ私が兄と同じぐらいの成績を取っても、ほめませんでした」
ある日、意を決して尋ねた。「どうしてお兄ちゃんしかほめないの」。すると父はうれしそうに言った。
「愛は女の子だから」
どれだけ頑張っても、ほめられないんだ。私には生きる価値がないんだ――。父との生活に疲れ果てていた母にもつらく当たられ、家出したことも一度や二度ではない。
父はレストランに行くと大声で「まずい」と言うなど、人を怒らせることが多かった。その姿を見ていたせいか、人との接し方がわからず、接触を避けるようになった。
中学でたまたま入った美術部…