インターネットバンキングの不正送金グループの首謀者が9日、逮捕された。グループは細かく役割を分担し、巧妙に金を奪っていた。不正送金が深刻化し、警察が対処を進めている。
警察庁サイバー特別捜査部と警視庁などの合同捜査本部によると、グループはリーダーとされる矢野洋平容疑者(44)をはじめ、少なくとも10人で構成され、役割分担していた。
- ネット不正送金の指示役逮捕 詐欺グループ全体、異例の摘発 警察庁
不正送金は準備から始まる。利用者のIDとパスワードを入手するのと並行して、不正送金に使うスマートフォンを調達し、被害金を転々とさせる暗号資産の口座を作る。スマホは、通信に必要なSIMカードを勝手に再発行し、他人の番号を乗っ取る「SIMスワップ」という手口で入手していた。スマホ販売店で偽造の運転免許証を示し、別人になりすますという。スマホは、送金の際の認証コードの受信などに使っていた。
口座情報の確認をする役もいる。入手したIDとパスワードで銀行のサーバーにアクセスできるか、口座の残高は幾らかを確かめる。
こうした準備を経て、実行役がサーバーにアクセスし、銀行口座から暗号資産取引所の口座に不正送金させる。今回の捜査では、サイバー特捜部が暗号資産の取引を追い、口座を転々とした後に矢野容疑者が関係する口座に集まっていたことを確認したという。
矢野容疑者はIDやパスワードをメンバーに伝え、個別に指示していた。口座情報を確認する役だった会社員の松井優樹被告(24)は、矢野容疑者から報酬として100万円相当の暗号資産を得ていたという。矢野容疑者とメンバーのやりとりには、匿名性の高い通信アプリ「テレグラム」が使われていた。
ネットバンキングの不正送金に使われるIDやパスワードは一般的に、偽サイトに誘導して情報を盗み取る「フィッシング」という手口で奪われることが多い。矢野容疑者がどうやって入手したのかは、これまでの捜査で分かっていないという。
16都道府県警、警察庁が主導で合同捜査本部
グループへの捜査では、各地…