更生保護施設「愛正会」の退所者宅を訪問する半野田孝郎さん。ぽつりぽつりと話す近況に耳を傾けた=2024年5月20日、大阪市内、遠藤真梨撮影
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 「その体で酒は毒だと思わなあかん。飲んだら本当に命にかかわるよ」。5月9日、大阪市旭区にある障害者グループホームの事務室で、精神保健福祉士の男性が、男性入居者(45)に優しく声を掛けていた。

 このホームは、NPO法人「ぴあらいふ」が運営している。男性はアルコール依存症で、自律神経失調症とも診断されている。作業所で働いたお金などを酒に費やし、さらにつけ払いの店で飲む。半月ほど前、腹部の痛みが激しくなって5日間入院。肝機能の数値が極度に悪化し、命の危険があった。

 精神保健福祉士は、大阪市淀川区の更生保護施設「愛正会」の半野田(はんのだ)孝郎さん(73)。元大阪市職員で、最後は西区長を務めた。区長だった2010年7月、区内のマンションの一室で、1歳と3歳の子どもが餓死しているのが見つかった。当時23歳の母親が離婚後に2人を育てていたが、置き去りにして遊びに出かけていた。全国ニュースとして大きく取り上げられたこの事件が、更生保護の仕事を志す大きな契機になった。

 現場のマンションは大阪市中…

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