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 6月23日付朝日歌壇・朝日俳壇面のコラム「短歌時評」をお届けします。歌人の小島なおさんが、5月に死去した柳宣宏さんの作品を引用し、「素手で世界を慈しむ歌世界」を築いた歌人をしのびます。

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短歌時評 小島なお

 海からの風に吹かれて夏草が初めて「ああつ」と言つたのでした

  (歌集『与楽』)

 地上に生まれてはじめての潮風にさやぐ夏草。その新鮮でみずみずしい官能の声が聞こえてくる。

 五月八日、歌人の柳宣宏さんが虚血性心不全のため七十一歳で亡くなった。早稲田大学在学中に師となる窪田章一郎に出会い、卒業後の昭和五十一(一九七六)年に結社「まひる野」に入会。国語教師をする傍ら、長く編集委員を務めた。

 とんぼには名がありません、太い尾に 海のひかりを曳いて飛びます

  (同)

 てのひらに落葉を掬えばあた…

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