藤井聡太名人への挑戦権を10人のA級棋士が争う「第83期名人戦・A級順位戦」(朝日新聞社、毎日新聞社主催)が6月14日に開幕し、19日までに1回戦(全5局)のうち4局が指された。記者は、このうち3局を現場で見た。私見だが、例年より熱戦、好局が多い印象を受けた。棋譜の余白に書き留めたことなどを、記してみたい。

 まずは、4局の事実関係を――。

 ▲永瀬拓矢九段(今期A級での順位は2位)-△佐藤天彦九段(同6位)戦は14日、東京で指され、佐藤九段の勝ち。この1局だけ記者は現場では見ていないが、深夜の逆転劇という評判だった。

 ▲増田康宏八段(同10位)-△菅井竜也八段(同4位)戦は18日、大阪・関西将棋会館で指され、今期から新たにA級に参戦した「新A級」の増田八段が勝利。

第83期A級順位戦1回戦に臨んだ増田康宏八段(左)と菅井竜也八段=2024年6月18日午前、大阪市福島区の関西将棋会館、佐藤圭司撮影

 19日は名古屋将棋対局場で2局。▲千田翔太八段(同9位)-△稲葉陽(あきら)八段(同5位)戦は「新A級」の千田八段が勝利。▲佐々木勇気八段(同7位)-△豊島将之九段(同1位)戦は佐々木八段が勝利。

 ここまで4局の特徴の一つは、順位が下の棋士が全て勝ったこと。上位の棋士たちは「これは、うかうか出来ない」と感じたのではないだろうか。今期A級は盛り上がりそうな予感がした。

 特に、一つ下のB級1組から…

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