建築のノーベル賞といわれるプリツカー建築賞に輝いた山本理顕さん(79)。横浜市に設計事務所を構える山本さんが、かつて教壇に立った横浜国立大で受賞記念講演をした。テーマは「閾(しきい)」。日本の住宅、さらにはコミュニティーのあり方を変える力を秘めているという。
山本さんによると、閾とは、私的空間である家の中に外の人を招き入れる、いわば客間のような空間であるという。世界の集落を調査する中で、古代ギリシャにも現代のスペインやイエメン、インド、ネパールなどでも存在を確認した。
日本でも武家屋敷の座敷はその家の格式にあった人を招き入れる空間だった。町家も奥は家族のプライベート空間だが、表通りに面して商売ができる店舗部分は閾にあたるという。
閾があることは洋の東西を問わず、当たり前だった。しかし、戦後の日本では会社員家庭が増え、格式というものがなくなり、閾の概念を持つ住宅は消えていった。
最初は「金魚鉢」と敬遠されたが
「日本の住宅のほとんどを供…