リコーで定年を迎え、再雇用を選択せずに、ものづくり改善コンサルタントとして「ひとり起業」した野毛由文さん=静岡県三島市

 定年を迎えたら、再雇用を願い出て「会社に雇われる働き方」を続けるか。それとも、会社を去って「雇われない働き方」を模索するか――。リコーに勤めていた野毛由文さん(64)が悩み始めたのは、定年まで3年を切った57歳の頃だった。

 職場の先輩は、ほとんど再雇用を選んでいた。かつての部下が上司だからか、仕事の内容が物足りないのか、どこか表情は暗かった。再雇用されたとしても最長65歳まで。その先の人生も長いことを考えれば、リタイアするには早すぎると感じた。

 気持ちはしだいに「雇われない働き方」に傾いたが、自分に何ができるのか分からなかった。

 国立大学の工学部を出て、リコーに入った。プリンターで使うトナーやインクの工場の設計開発など技術職として21年、法人向けの営業職として17年、勤めた。課長には就いたが、部長にはなれず、引け目も感じたサラリーマン人生だった。

 会社帰りや週末に、起業塾やフランチャイズ経営のセミナーに参加するようになった。一時は小中学生向けの学習塾を開こうかと考えたが、生徒が集まらないのに教室の家賃がかかり続けるリスクなどを考慮し、踏みとどまった。

 一人で開業できて、運転資金がそれほどかからず、社会の役に立つ仕事ってなんだろう。

一冊の本がセカンドキャリアに一歩踏み出す背中を押しました。後半では定年後の起業について専門家と考えます。成功に導く「5原則」とは

 一冊の本が目にとまった。「…

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