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 天体の運行から運勢を読み取る「星占い」の歴史をたどり、伝統を伝える占星術研究家の鏡リュウジさん。神秘と科学のあわいにとどまる独自のスタンスは、どこから生まれたのか。活動の原点にある「みっつ」を聞きました。

鏡リュウジさんの「みっつ」

①オトフリート・プロイスラー「小さい魔女」(大塚勇三訳、Gakken)
②伊藤博明「ルネサンスの神秘思想」(講談社学術文庫)
③リズ・グリーン「サターン 土星の心理占星学」(鏡リュウジ訳、青土社)

 《最初の一冊は、ドイツの児童文学作家プロイスラーの「小さい魔女」だった》

 物心ついた頃から「エルマーと16ぴきのりゅう」や「ガラス山の魔女たち」など、子ども向けの魔法ファンタジーに惹(ひ)かれていました。「小さい魔女」も名作童話として知られていますが、魔女たちがブロッケン山に集まる「ワルプルギスの夜」が冒頭に出てきて。読んでから、妹と一緒にほうきにまたがって「ワルプルギスの夜ごっこ」をした記憶があります(笑)。ヨーロッパの魔法世界への最初のあこがれですね。

 《主人公の小さい魔女が、「いい魔女」になろうと「いいこと」を重ねていく物語。しかし、終わり近くで魔女のおかしらに「わるいことをする魔女だけが、いい魔女なんじゃ!」とどなられる》

 「いいこと」と「わるいこと」の意味が反転するんです。それにも驚きました。シェークスピアの「マクベス」に出てくる魔女たちのセリフでいえば、「きれいはきたない、きたないはきれい」ですよね。ようするに、いまこことはちがう価値観の世界があるんだということを小さいときに初めて意識させられた。振り返ると、そのことは大きかったように思います。

 《魔法世界へのあこがれは…

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