ノーベル文学賞候補として知られるイタリア人作家で、戦時中の幼少期に名古屋の抑留所に約2年間収容されたダーチャ・マライーニさん(87)が来日した。14日、かつて過ごした抑留所の跡地や愛知県豊田市の寺を訪れた。
ダーチャさんは1938年12月、人類学者だった父フォスコ・マライーニさん(1912~2004)ら両親と来日。43年9月、日独の同盟国だったイタリアが連合国に降伏すると、一家はイタリア北部にドイツが樹立させた傀儡(かいらい)政権への忠誠を拒み、ほかの十数人とともに名古屋市にあった抑留所に収容された。看守が食料を横領し、激しい飢えと戦う過酷な生活だったという。
天白区内の抑留所の跡地は現在、大手企業の社員寮になっている。ダーチャさんは「何も残っていない。100%別のものになっている」と変化に驚いた。そして、市民の多くが、抑留所の存在を知らない実情について「未来を築くには過去を大切にしなければならない。同じ過ちを繰り返さないためにも、過去が醜いものであっても、小さな形でも残すことが大切」と語った。
豊田市で出会った少女、友として育んだ交流
ダーチャさんはその後、空襲…