霧多布岬沖で並んで浮かぶラッコ(陸上から望遠レンズで撮影)=2024年5月31日午後1時18分、北海道浜中町、角野貴之撮影
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 かわいらしい姿で全国的なブームとなった「ラッコ」。実は、国内施設での飼育頭数は年々減り、今や3頭しかいない。そんななか、北海道東部の沿岸で近年、野生のラッコの目撃例が増えている。専門家は50頭余りが生息すると推定するが、新たな問題も生じている。

 ラッコは北太平洋に分布し、かつては15万~30万頭が生息していたと推定されている。しかし、18世紀から20世紀初頭にかけて乱獲され、一時は2千頭ほどまで激減した。

 悲劇を招く一因となったのが、毛皮の質の高さだ。

 国立科学博物館の田島木綿子・研究主幹(海棲(かいせい)哺乳類学)は「皮膚の近くにある軟らかい毛は空気を多くため込むことができ、冷たい海で体温を保つのに役立つ。保温性が高いうえに、手触りがとても良い。ラッコの毛皮はもてはやされ、乱獲の対象になってしまった」と話す。

 その後、国際的な保護が進んで個体数が回復し、国内では1982年に水族館で飼育がスタート。ピーク時の94年には、全国の施設で計122頭に達した。

 しかし、保護の機運が高まった米国で野生のラッコの捕獲が禁止されるなどして輸入が途絶え、飼育頭数はじわじわと減っていった。

 現在、国内で飼育されているラッコは、鳥羽水族館(三重県鳥羽市)とマリンワールド海の中道(福岡市)にいる計3頭だけだ。

施設のラッコ「世代を重ね、繁殖力低下」

 ラッコの飼育に40年余り携…

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